アルキメデスの大戦を見て、現代の日本に重ねて想うこと

2019年夏に公開された映画「アルキメデスの大戦」DVDを観ました。

ストーリーは戦艦大和建造を巡る戦争映画です。菅田将暉さん演じる天才数学者の櫂直(かいただし)が、数学の力で戦艦大和の建造を阻止し、戦争さえも止めようとした男の物語です。

実史に基づいた部分も多く、登場人物の山本五十六も実在の人物ですし、戦艦大和も実在した艦です。大和建造を巡っては、実際に軍部の推進派と反対派が机上で争ったという話もありますので、興味深いところです。

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ノンフィクションの怖さ

ネタバレにならない程度にお話ししますと、1945年4月7日、駆逐艦10隻を引き連れ、一機の援護機もないまま、片道のみの燃料を積んだ大和が沖縄に向かうさ中、延べ1,000機に及ぶ米軍機の反復攻撃にさらされ、無惨に沈没するシーンから始まります。(書いているだけで涙出そうです・・・)

冒頭のこのシーンに関して、CGで作られたフィクションだし、沈没する結果は分かっていながら「嘘やろ・・・」っていう鳥肌級の衝撃でした。

ということは数学をもってしても大和建造は阻止できなかったのか?その理由は??

結果的に戦艦大和建造に至ってしまった経緯を今の政治と重ねて観るとより面白いと思います。

戦時中の国のお財布事情

実際この時代の軍事予算は、国家予算の4割を占めており、軍部は自由にお金を作ることが出来る仕組みを利用して、湯水の如く軍事費を拡大していきました。その結果、時代錯誤の遺物というべき巨大戦艦「大和」を誕生させてしまったわけです。

それにしても国家予算の4割が軍事費・・・信じられない世の中です。そのせいで国民の多くは貧困に喘いでいたのでしょう。物資が不足した“超インフレ”の怖さは想像を絶するものだったと思います。

現在のとある政治家の言葉を思い出しました。

湯水の如く財政支出しまくると、国は戦争への一途を辿る恐れがある

MMT(現代貨幣理論)を批判するのに、第二次世界大戦中に軍部が行っていた財政拡大を重ねていった言葉です。なるほど・・・・。この映画を見て比喩の理由が分かりました。かつての軍部ほどに力を持っているのが現在の財務省かもしれません。軍部は財政拡大、財務省は緊縮財政。言っていることは真逆ですが、自らの利益を優先する姿勢においては共通するところが多いですね。

数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う

安倍政権の統計不正問題等で、国民賃金が上昇したかのように見せかける「数字の改ざん」で、あたかもアベノミクスの成果が示されてしまった件。これこそ嘘つきが数字を使った典型です。

また、新国立競技場の建設費用がコンペを行った時は1,300億円だったのに、2,520億円という莫大な金額に膨れ上がった問題。後の追加工事の費用を加えると3,000億円規模になりそうな状況です。

これってまさに映画の劇中にも出てきました。戦艦大和を作りたい推進派と航空母艦を作りたい山本五十六の反対派の建造見積争いです。

戦艦大和を建造したい推進派の見積り

8900万円(現在の貨幣価値1億6000万円)

航空母艦を建造したい反対派の見積り

9300万円(現在の貨幣価値1億7000万円) 

戦艦大和は普通の航空母艦より幅が倍近く(38m)あり、排水量も倍以上。大和に装備する主砲塔などの重兵器を加えると、航空母艦より安く出来るはずがありません。

見積担当者もその事実は把握しているものの、上層部から「お金の操作なんぞなんとでもなる」のひと言で、見積を通そうとするわけです。決まったら、こっちのもんとはこのことです。

実際には当時の価格で1億5000万円(国家予算の4%)近くの費用を要することが明らかになりました。また装備の改造等の追加を含むと2億円は下回らなかったのでは思われます。まさに数字を巧みに使った嘘つきのゴリ押しです。

にもかかわらず、戦艦大和は建造されてしまいました。理由があまりに常軌を逸しています。

巨大戦艦を建造すれば敵国アメリカに勝てる。

その力を過信した日本は、対アメリカとの戦争に突入していきました。

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兵力にしても、国力にしても圧倒的な差があるにも関わらず、「勝てる」と信じ切るだけの魔力が大和にはあったということです。

余談ですが、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」で波動砲を使うシーンにおいて、クルーの言葉が印象的でした。

すごい武器だよ! これさえあればガミラスと対等に……いや、それ以上に戦える!

巨大な宇宙的国家相手に一隻の艦で勝てると思わせるほどの威力がある波動砲はかつての対アメリカを意識した言葉のように読み取れます。

負け方に失敗した日本

映画冒頭の戦闘シーンで気なることがありました。打ち落とされた米戦闘機のパイロットがパラシュートで脱出、着水するや否や、近隣を偵察していた飛行艇が、そのパイロットを救助するシーン。その光景をただ茫然と見つめるだけの大和乗組員。

戦艦大和は攻撃力も防御力も桁違い、アメリカ戦艦を一発で沈められる46センチ主砲を9門も装備していましたが、ほとんど活躍の場がなく戦果はゼロのまま、約3000人の乗組員と共に1億総特攻の魁として撃沈、滅びの美学を追究した悲しき運命の戦艦となりました。

かたやパイロット一名を救助するため飛行艇を待機させるアメリカと、ろくな航空支援もないまま、大和を片道特攻させた日本。人の命を尊いものとする国には勝てなかったという事実です。

損耗率が70%を超えてもなお戦を続けようとする日本は滅びの美学を追究するあまり「負け方にも失敗した」と言えます。

 総括

戦争時と現在とで、価値観を比べること自体、無意味です。しかし国の中枢部のレベルは戦時中の軍部も現在の政府も私から見ればたいした違いは感じられません。

  • 国民にバレなければ見積改ざんも容認
  • 常勝日本を唱い続けるメディアのプロパガンダ
  • 軍艦建造に関する利権誘導
  • 過去の栄光にしがみつき精神論重視で技術的進歩を軽んじる風潮

現在の日本政府も似たようなものです。

毎日どこかでデータ改ざん問題が出てきますし、国の借金1000兆円で経済破綻寸前というプロパガンダ、大企業優遇の税制、GAFAの足元にも及ばない日本IT企業、高度成長時代を支えたという現代人の驕り・・・・。

GDP3位とはいえ、経済成長していない日本は、最終的に何やっても負ける、しかも負け方にも失敗し続ける・・・。そんな危惧を感じずにはおれない・・・・というのが今回ご紹介した「アルキメデスの大戦」の感想です。